今月の本: パノラマえほん うちゅうといのち
監修:縣 秀彦、真鍋 真
イラスト:国立天文台4次元デジタル宇宙ビューアーMitaka 、かんばこうじ
文:高田裕行
発行:旬報社(2013年)
日本は世界でも有数の、天体観測が盛んな国だとご存じだろうか。
昔小学校のころ、校外学習でプラネタリウムへ行った人も多いだろう。
実は日本では人口当たりのプラネタリウムや天文台がある数が、世界でも非常に多い国なのだそうだ。そして各地に天文クラブなど活動も盛んだったりする。
星を見ることは時間を見ること
日本で親しまれている天体観測だが、私たちが望遠鏡や肉眼で見る夜空の星の光は、実際は私たちが目で見ている位置にいる訳ではない。
「星を見ることは、宇宙の歴史を見ることなんです」と教わったことがある。星の光を「光年」で表すが、これは光の速度で1年間分の距離を示すもの。つまり、8光年であれば8年分、アンドロメダ銀河を表す「100万光年」であれば、100万年分もの実に気が遠くなるような、宇宙の歴史を意味しているのだ。
宇宙の果てまでの距離は137億光年。つまり宇宙の歴史は137億年という計算だ。
奇跡のような46億年地球の歴史
そんな奇跡のような、気が遠くなる宇宙の歴史を、この絵本は「宇宙の果てをめざす137億光年の旅」として約3メートルの長さで表現している。国立天文台のデータを用いたその精緻なイラストは、私たち人間の存在を吹き飛ばすほどの圧倒的な時間の流れを描き出している。
裏側の生命を巡る旅は、その宇宙の片隅で生まれた私たち地球の歴史をイラストで描かれる。私たち人類の祖先がイラストに登場するのは、10万年前、本当に最後の最後に登場する、宇宙の歴史の中では端役にすぎない、ともいえる。
地球には私たちの目に見える哺乳類や生物だけではない。顕微鏡でしか見えない微生物からクジラのような大きな動物まで、その数は3000万種以上に上ると言われている。
ガリレオが望遠鏡を作って400年、私たち人類は、この地球が太陽の周りをめぐる恒星であること、地球に不可欠な命をもたらす太陽は、「天の川銀河」という、約2000 億個の恒星の集団のひとつでしかないこと、さらにその「天の川銀河」も宇宙にある銀河のひとつにすぎないことも突き止めた。
爆発や消滅を繰り返す宇宙の歴史の中で、この地球は奇跡のような46億年を経て、今の私たちがいるのだ。
mudefではこれまで石川県や横浜市にある「MISIAの森」の企画として、「NPO法人C・C・C富良野自然塾」の全面的なサポートを得て、地球の46億年の歴史を、460mの道を歩くことで理解するプログラムを開催してきた。10億年が100メートル。そして私たち人類が誕生したのが、わずか1メートル。そして石油や石炭を用いた私たちの近代の暮らしは本当にわずかな距離でしかない。
その短い距離と、たどり着くまで歩いた地球の歴史、そしてそれを創り出した137億光年もの宇宙の歴史を思うと、恐竜時代に比べて数百~数千倍の速さで、生きものたちが絶滅していると言われている現状に愕然とするだろう。
見上げると宇宙の時間。見渡せば、地球の奇跡。私たちの体を包み込む、数えきれない宇宙のかけら。
宇宙の歴史の結果として地球が誕生したこと。絵本を読むうちに、私たちの身の回りの生きものが愛おしくなること、うけ合いだ。
*本書で使用されている宇宙の画像は、以下のソフトから見ることも可能です。
国立天文台4次元デジタル宇宙ビューアーMitaka http://4d2u.nao.ac.jp/html/program/mitaka/
*本書を監修された縣秀彦さんのエッセイはこちら http://satoyamabasket.net/contents/cmenu-89.html
われら星の子 宇宙の子
海に生まれ大地に育ってきたわたしたちの体には
はるか百数十億年の
宇宙の歴史が刻まれている
ほら今日もどこかで小さな光が
「宇宙連詩 第1期より 山崎直子」