タイセイヨウクロマグロ(クロマグロ)

【学名】Thunnus orientails
【英名】Pacific Bluefin tuna
【分布】太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布
【IUCNレッドリスト】絶滅危惧類LC

マグロの中でも最高級とされるクロマグロ。最近では、近畿大学の水産研究所が世界で初めて、クロマグロの完全養殖に成功したことで話題になりました。

日本は世界一のマグロ消費国です。今回紹介するクロマグロは、世界全体の約9割を消費しています。約5000年前の縄文時代約5000年前の貝塚からマグロの骨が出土されるほど、古くからマグロは日本人の食文化と切っても切れない関係にありました。

しかし、その中でもタイセイヨウクロマグロは絶滅危惧種に指定されています。

タイセイヨウクロマグロとは

タイセイヨウクロマグロはスズキ目サバ科に分類される海水魚の一種であり、世界で最も巨大で速く、美しい色を持つ魚の一種問われています。太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布しており、成魚は全長3m・体重400kgを超え、日本沿岸で漁獲されるマグロ類では、最大級の大きさです。北半球の中でも太平洋の熱帯・温帯海域に広く分布しています。

タイセイヨウクロマグロは、同じくらいの大きさの個体同士で群れをなし、外洋(陸から遠く離れた広い海)の表層、中層を高速で回遊しています。水の抵抗の少ない紡錘型の体型と強い筋力による推進力で、時速70-90kmで回遊することができます。

食性は肉食で、大量の小魚や甲殻類、イカ、ウナギなどを捕食することでその巨体を維持しています。

海水の温度が25℃程度の温暖な海域で春から夏にかけて産卵します。受精卵は直径約1㎜の球形で、約32時間かけて全長約3㎜の仔魚が孵化します。小動物や餌がない場合には共食いもして孵化し、約22日で約3㎝までに成長します。約74日で全長25㎝に達し、形態は成魚とほぼ同じ状態となります。しかし、性成熟は5年かかり、魚類の中でも遅い部類になります。

 

タイセイヨウクロマグロの乱獲

タイセイヨウクロマグロの個体数が減少した原因は乱獲です。

マグロの食文化は古くから日本にあったものの、トロが赤味以上の価値を持つことはありませんでした。しかし、戦後の経済成長とともに食事の洋風化が進み、脂肪が人々にとって「おいしい」と感じるようになったのです。1960年代になると、トロは貴重で高級な存在として認識されるようになりました。

さらに、冷凍技術の進歩によって、マグロを世界中の海で獲り、日本へ運ぶことが可能になったことでより大量のマグロが日本国内で出回るようになりました。1960年代には、日本のマグロの輸出量は輸入量を上回っていましたが、1970年代には逆転しています。1980年代には、円高によって輸入量が急増、国内で安いマグロが流通しました。トロの部位を多く持つタイセイヨウクロマグロの個体数は、こうした背景の中で減少したのです。

また最近では、海外での寿司人気による消費の増加が指摘されています。特に多くの人口を抱え、経済成長の著しい中国でもタイセイヨウマグロの消費量は増加。こうした消費量の増加により、築地市場で取引されたクロマグロの価格は急上昇しました。2008年は最高値607万円だったのが、2011年には3249万円にまで上がっています。これはクロマグロの希少価値が原因で値段が上がっただけではなく、マグロの初競りが毎年テレビで取り上げられて、ショー化していることも原因に考えられます。

 

今後の課題

クロマグロを含め、他の種のマグロも絶滅の危機に瀕していることをうけて、和歌山県那智勝浦町の株式会社ヤマサ脇口水産とWWFは提携し、中長期的なビジョンを掲げ今後のグロ漁業の改善と保全を支援して、けん引していくことを宣言しました。宣言では、違法な漁業による調達の禁止や絶滅危惧種の捕獲の禁止など、持続可能な漁業を行うことが挙げられています。(宣言内容はこちら

しかしながら、こうした保護活動はまだまだ始まったばかりです。古くから日本の食文化にあったマグロ、日本の経済成長とともに乱獲されていったクロマグロ、その現象の大きな原因はマグロの消費世界一の私たち日本人にあります。

今までに、人間の私利私欲の為にこの世から姿を消した種は沢山居ます。今回のクロマグロの個体数の減少の原因も人間の私利私欲にあります。

これ以上、人間の都合で更なる犠牲が出る前に、一度考えるべきなのではないでしょうか。日本の食文化に古くから馴染みのあるマグロが私たちの食卓から消える前に。

 

 

 

 

 


文責:大妻女子大学 4年 栗原亜実