Red Zoo

トキ
【学名】Nipponia nippon
【英名】Japanese Crested Ibis
【分布】 20世紀初頭には、中国、ロシア、朝鮮半島、台湾、日本など、東アジア一帯に広く分布。江戸時代、日本でも北海道から九州までほぼ全国に生息。その後、乱獲と生息環境の悪化により東アジア一帯で減少が進み、20世紀後半までには中国と日本を除き絶滅。現在、野生のトキが生息しているのは、中国陝西省(せんせいしょう)洋県付近のみ。
【環境省レッドデータブック】野生絶滅(EW)
1892年「狩猟に関する規制」で規定する保護鳥に加えられる
1934年 トキ、天然記念物に指定
1952年 トキ特別天然記念物に指定
1960年 トキ、国際保護鳥に選定
1981年 野生トキ5羽を一斉捕獲
1993年 トキを種の保存法の国内希少野生動植物に指定
1998年 江沢民国家主席がトキのペア贈呈を表明
1999年1月30日「友友」「洋洋」のペアが到着
1999年5月21日「優優」誕生
2003年10月10日日本産最後のトキ「キン」が36歳で死亡

 

昔から大好きな本に、斎藤隆介の「ベロ出しチョンマ」がある。繰り返し繰り返し、ずっと読んできた。大好きなお話がたくさんあるのだけど、その中に「トキ」という話がある。トキのように美しくあれと願ってトキと命名された女性が登場する話だ。

年を取って白髪になったトキが畑仕事をしている風景が、本物のトキが畑に舞い降りて一休みしている姿に例えられる。

 

本を読んですごく想像した。

トキってどんなふうに大空を舞うんだろう?

どんな姿で畑にいるんだろう?

 

残念ながら、日本では野生のトキは絶滅した。「トキ」でも描かれた、「朱鷺色」と呼ばれる桃色に近いような美しい羽を狙った乱獲や、トキが稲を食べると考えられた(実際トキはドジョウ、サワガニ、カエル、タニシ、昆虫など、もっぱら動物性の餌を食べ、コメは食べない。田んぼにいる虫を食べていたのを誤解された)ことで、害鳥として駆除の対象となった。

新潟県佐渡島に、最後のトキ「キン」の剥製がある。最後の「キン」と「ミドリ」の間には最後まで子どもが生まれなかった。しかし現在佐渡トキ保護センターでは中国から贈られたトキがすくすく育っている。中国から来たトキは、遺伝子的には日本のトキとほぼ変わらないのだそうだ。中国から贈られたトキの子孫が野生復帰をしたのは2008年。野生のトキを一斉捕獲し、保護したときから27年が経過していた。

「今佐渡島はトキのおかげで暑いんだよね」とも言われた。トキの野生復帰のために、減農薬栽培にする農家が倍々ゲームのように増加しているのだ。減農薬にすることで、畑に生き物が戻ってくる。トキを保護するだけではなく、生態系に配慮したお米として佐渡の米はブランド米となった。農家にとってもトキを保護することで得ることが多いのだという。

トキが大空に舞う姿を佐渡島でみかけた。巣に戻るのだろう。田んぼから雑木林へ弧を描きながら飛んでいた。その羽は、確かに「朱鷺」色だった。