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コウノトリ
【学名】 Ciconia boyciana
【英名】 white stork
【分布】 ロシア極東のアムール川流域、ウスリー地方、中国東北地方、朝鮮半島、日本に分布。大陸では繁殖個体群がいる。
【環境省レッドデータブック】絶滅危惧ⅠA類(CR)
1956年 特別天然記念物に指定。
1971年 (日本国内)繁殖個体群・野生絶滅
1993年 国内希少野生動植物種(種の保存法)で保護の対象となる

コウノトリは全長約110センチ、翼を広げると2メートルにもなる、大型の鳥だ。体は白く、翼は幅広く風切羽は黒い。目の周りには、赤いアイリングがある。

コウノトリというと、赤ちゃんをお母さんのところに運んでくれる、という話を思い出す方も多いかもしれない。ディズニー映画「ダンボ」でもお母さんゾウにダンボを運んできたのは、コウノトリの郵便配達ではなかったっけ?黒くて長いくちばしに、赤ちゃんをくるんだ布を加えて、大空を飛んでいるコウノトリの絵を、小さいころに目にしたことがある人も多いのではないだろうか。

しかし、コウノトリが赤ちゃんを運びたくても、運ぶのは不可能かもしれない。
近い将来絶滅の恐れが非常に高いからだ。「人間の赤ちゃんを運ぶのは無理!」とのコウノトリからの抗議が聞こえそうだ。

このコウノトリ、かつては日本各地で繁殖していた。鹿児島県には、「コウノトリの恩返し」という昔話も残っている。

しかし、明治期以後の乱獲や、コウノトリが巣を架ける木が、伐採されたりするなど、コウノトリの棲息環境は悪化した。20世紀の初めには兵庫県に約100羽いたと推測されるコウノトリも、1956年には約20羽にまで減少してしまった。
1962年には兵庫県が「特別天然記念物コウノトリ管理団体」に指定され、1965年に豊岡市で人工飼育を開始。しかし、日本のコウノトリの数は減少し、1971年に豊岡市で日本最後の野生のコウノトリが保護されたものの、死亡。1986年には飼育していた最後の一羽もなくなり、国内で繁殖していた野生のコウノトリは絶滅してしまった。

現在は大陸から一時的に飛来する複数のコウノトリがみられるだけとなっている。

とはいえ、野生のコウノトリの最後の生息地、豊岡市では、県立コウノトリの郷公園で人工飼育下での繁殖に成功し、その数を増やしている。いつかコウノトリが大空を舞うようになることを願って、飼育が続けられている。

コウノトリがかつての生息地であった里山を飛ぶには、越えなければならないハードルは高い。
湿田の減少や、農耕地での農薬使用など、生息環境が悪化している中で、むやみに放鳥することは難しい。餌となるザリガニやカエル、魚などが獲れる湿地や田畑の保護をしなければならない。また、巣をかける森の保全も必要だ。コウノトリを保護するためには、生息するための環境そのものも保全し、維持しなければならない。
河川や湿地の開発、湿田の埋め立てによる生息地の消失や農耕地における農薬の使用によって採餌条件が悪化したり、農薬の影響などが心配される現在、野生復帰にはまだまだ時間がかかりそうだ。